第15章 狼なんかこわくない【トド松/学生松】
「トド松くん、ここで待ってて。何か温かい飲み物を買ってくるから」
荷物は後部座席に入れ、財布だけを持つ。
「あ、先生。ボク、今は緑茶の気分じゃないから」
「はいはい。じゃあ、緑茶以外ね」
「うん。ほうじ茶はOK。烏龍茶はNG。コーヒーならもっと嬉しい。砂糖入ってるやつ。でも、微糖はダメ。なければ、カフェオレでもまあ悪くない」
「あーもうっ、注文多いなぁ〜。分かった分かった」
自販機でホットコーヒーと念のためにほうじ茶も買い、急いで戻る。トド松くんは、意外にも言われた通り、車の中で大人しく待っていた。
「先生、ありがと!」
「好きな方飲んでいいよ。両方でもいいし。大丈夫? 今、寒い?」
運転席に座って、暖房の温度を上げる。
「ふふっ。先生が温めて」
「何言ってるの。いいから、飲んで」
トド松くんは、ゆっくりとコーヒーを飲み、ほうっと息を吐いた。
「はぁ、あったか〜い」
ニコニコと笑う。さっきよりは少し顔色がよくなったようだ。
「トド松くん、家はどこだっけ? 今から送っていくから」
「えぇ〜やだよ。せっかく待ってたのに」
トド松くんが途端に頬を膨らませた。
「やだって……じゃあ、どうするの?」
「先生の家に泊まる」
私はトド松くんを睨んだ。
「そんなのだめに決まってるでしょ?」
泊めるなんてできない。後でバレたら、それこそ一発退場レッドカード、即解雇だ。