第15章 狼なんかこわくない【トド松/学生松】
「せーんせっ!」
瞬間、後ろから肩を叩かれた。驚いて振り返る。
「え? トド松くん!? まだ帰ってなかったの!?」
背を丸め、震えながら立っていた男の子は照れ臭そうに笑った。
「うん、なんか帰る気になれなくて……。もっと愛菜ちゃん……あ、じゃなくて、先生と話したくて……」
よく見ると顔は白く、唇も紫色になっている。
私は慌ててトド松くんの手に触れた。
「冷たっ! もしかして、ずっとここで待ってたの!? トド松くんが教室を出たのって8時前だったよね?」
「うん。ボクが帰った時間、ちゃんと覚えててくれたんだね! 先生ってば、そんなにボクのことが好きなの?」
「何、バカなこと言ってるの! それぐらい把握してるよ。寒かったでしょ!?」
トド松くんは赤くなった鼻に手をやり、頬を緩ませた。
「えへ、寒かったあ! もう来ないかと思った」
こんな暗くて冷たい中でずっと待ってたの?
もっと早く教室を出るべきだったと後悔する。
「もう! なんで教室の中で待ってなかったの? 風邪ひいちゃうよ!?」
トド松くんは、ふふっと笑う。
「だって、教室の中にいたら、帰れって追い出すでしょ?」
まあ、確かにそうだけど……。
「でも、こんなところにいたらだめだよ。おうちの方が心配するでしょ?」
「大丈夫。おそ松兄さんに言ってあるし」
「そういう問題じゃないの! 何かあったら困るんだから! それに補導されてもおかしくない時間なんだからね?」
私は鍵を開け、トド松くんを助手席に押し込んだ。暖房をつけ、後ろのシートから膝掛けを取り、トド松くんの足を包む。