第13章 超洗剤クリスマス【逆ハールート】
「なんだジョ?」
「俺たち、色々あって体が透明になっちゃってんだよ。金にモノを言わせて、なんとか元の姿に戻せねーかな?」
「さっすがゲス松兄さん! 言ってることが酷すぎる! マジ頼りになるぅ! 好きぃー!」
トド松くんが目を輝かせる。
「できるジョー。今すぐ世界最高峰の科学者をロシアからチャーター機で呼べばいいジョ」
「マジで!? さすがは金づる坊! んじゃ、早速お願い!」
おそ松くんはハタ坊くんに抱きついた――。
……1時間後、私は元の姿に戻った6人と一緒にハタ坊くんを囲んでいた。
「いや〜、ありがとな。さすが世界最高峰の科学者! すぐに元の姿に戻してくれたな! 助かったよ。薬持っていっていいから」
おそ松くんの言葉に頷き、ハタ坊くんはテーブルの上にあった瓶を抱えて研究所を出て行った。
「ふぅ、これでようやく元の姿になったな。んじゃ、早速みんなでパーティーでもするか!」
おそ松くんが叫んだ瞬間、私は大変なことに気付き、「あっ!」と声を上げた。
「愛菜ちゃん、どうしたの?」
「薬! 惚れ薬は棚にしまったよね? ハタ坊くんはテーブルの上の瓶を持っていっちゃったよ!?」
みんなが目を丸くする。
「じゃあ、ハタ坊が持っていったのは違う薬?」
十四松くんの声に私は慌てて棚から惚れ薬を出した。
「走れば間に合うかも! ハタ坊くんに渡してくる!」
「あ、愛菜ちゃん、ちょっと待っ……」
チョロ松くんの制止を無視して、私は走り出す。
でも、よっぽど慌てていたんだろう。
玄関の手前で足を滑らせ、私は盛大にすっ転んでしまった。
瞬間、手から離れる瓶。
「あっ! やば……!」
咄嗟に手を伸ばすものの、一歩間に合わず。
派手な音と共に瓶は砕け、ピンク色の液体が飛び散った。空気に触れた液体はあっという間に気化して広がる。研究所内は甘い匂いに包まれた。