第12章 超洗剤クリスマス【チョロ松ルート】
「どうしました? ビューティー・ジーニアスのこの私、チョロ松に何かご不満でも?」
チョロ松くんが眼鏡を中指で上げながら、鋭くお美しい瞳で私を見る。
あ〜もうっ!
F6のチョロ松くんになっちゃったよ!
確かに理想だし、ある意味『ありがとうございまーす!』な状況だけど!
でも、でもでもでも、私はいつものチョロ松くんとデートしたいの!
心の中で地団駄を踏みつつ、私はチョロ松くんに笑いかける。
「えっと、ご不満はないですけど、できれば、元のチョロ松くんに戻ってほしいかなぁと思いまして……」
「なるほど。それはつまりアイデンティティーの回帰、と仰りたいんですね? 18世紀の心理学者アカツーカの唱えた心理学論ですよね。あなたという人はなかなか鋭い考察力をお持ちですね。今、マスター中のヒエログリフと同じくらい興味深いかもしれません」
うん、カッコいいんだけど、こっちのチョロ松くんとは話が合わないんだよね……。誰なの、アカツーカって……。
「いつものチョロ松くんかぁ……。はぁ、顔は覚えているつもりなのに、いざちゃんと想像しようとすると案外難しいな……」
でも、ここで立ち止まっているわけにはいかない。今、チョロ松くんを元に戻せるのは私しかいないんだから。
私は小瓶を握りしめて立ち上がった。
「よし! 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるって言うし、元に戻るまでチョロ松くんにキスしまくるから!」