第10章 お持ち帰りの長い夜【一松】
《愛菜side》
何度か名前を呼んで、ようやく一松くんはハッと私の顔を見た。
「あ、ごめん……ありがと……」
え? それだけ? イマイチだったのかな?
手を出してくる気配もない。まるで自分をすべて否定されたみたいな気分だ。
はぁ……今日初めて会った人の前で上半身裸になって、自分は何をやってるんだろ?
なんだか惨め……。
泣き出しそうになるのを必死に堪えていると、一松くんが「あのさ……」と呟いた。
顔を上げると、真っ赤な顔で私を見ている。
「なに?」
「下も見せて欲しいんだけど……」
「え……?」
咄嗟のことで返事に詰まると、急に一松くんは大声を出した。
「ど、どうせイヤだって言うんだろ!? 分かってるよ!? そりゃ、おれみたいな圧倒的最底辺のゴミに見られるなんて嫌ですよね!? でも、もう乳見られちゃったんだから! 下まで見せても一緒だよね? そんなキレイな乳、おれみたいな汚れたクソの目に晒しちゃってさ! エロすぎるんだよ! だから、もう下まで見せて! いいよね!?」
「は……? え?」
一松くんの勢いに気圧されて唖然としていると、さらに畳み掛けられる。
「見せてっていうか、もう見せてくれなきゃ困るんだけど!」
血走った目で叫ばれ、思わずお腹の奥がジュンと熱くなった。
あれ? もしかして、私の裸に興奮してくれたの? がっかりしていたわけじゃなかったんだ。ちょっと嬉しい……かも……。
私は小さくうなずいた。
「う、うん。別にいいよ……」
「は……? マジで……?」
「うん」
一松くんはまたじりじりと寄ってくる。
「ねぇ……その下って何も履いてないんだよね……?」
「そうだけど……」