第10章 お持ち帰りの長い夜【一松】
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シャワーを浴び終わって部屋に戻ると、愛菜ちゃんはベッドに座ってフードメニューを見ていた。
おれに気づいて顔を上げる。
「あ、喉が乾いちゃって。一松くんも何か飲む? 何がいい?」
「え……じゃあ……ドクペ……」
「えー、さすがに置いてないなあ。それ以外なら何にする?」
おれは彼女の隣に腰掛け、メニューを覗き込んだ。
「そうだな……ええっと……」
迷いながらふと顔を上げると、驚いた表情の愛菜ちゃんと至近距離で目が合った。
「あ!?」
ち、近い!?
おれは固まった。
しまったあぁぁあ! メニューに気を取られて、何も考えずについ隣に座ってしまった。
ヤバイ、近すぎだろ……。
ど、どうする? 今から離れたら不自然だし。でも、こんなくっついた状態はまヤバイだろ……。
「あ……えっと……ごめん……」
とりあえず体を横へずらそう。
そう思いながら視線を落とした瞬間、彼女の胸元が目に入った。
バスローブの隙間から見える豊満な谷間。さらに下を見ると、はだけて見えかけている太腿。
途端に心臓が早鐘を打つ。
あ、これは……まずい……。
おれは離れるのをやめ、愛菜ちゃんのほうを向いた。ベッドに膝をついて上がり、にじり寄る。
素直に言うんだ、気持ちを。素直に、素直に。
ゴクリと喉が鳴る。
「あ、あの……」
素直に今の気持ちを――。
「おっぱい……見せて……」
「は?」
愛菜ちゃんがポカンと口を開ける。
部屋の空気が凍った。