第10章 お持ち帰りの長い夜【一松】
《一松side》
帰りたくない……。
せっかく入ったのに、何もしないで帰るとか悲しすぎだろ。料金見たら、結構高いし。でも、もうこれ完全に帰る流れだ。
セックスしたかった……。せめて見るだけでも……。
おれは泣きたい気分で彼女に目をやった。
どうやったら、女って見せてくれんの……?
服を脱がすっていうけど、まず脱がす前段階が分かんないんですけど。あ〜もう、パッと脱いでくれないかな。
見せてくださいって、素直に頼むか?
ここまでついて来たんだから、土下座くらいすれば見せてくれるかも……いや、それ絶対にひかれる……ってか、そんなこと言えな〜い! 言えるわけな〜い!
それか押し倒すか……? ムリムリムリムリ。いやがられて叫ばれでもしたら、一生のトラウマ。来世まで立ち直れない。大体、そんな度胸があったら、とっくに友達もできている!
「ねぇ、一松くん」
「な、なに……?」
我に返ってキョドりながら答えると、愛菜ちゃんは頬を染めて下を向いた。
「あ、あのね、もったいなくないかな? 今、帰っても時間分の料金取られるし。ど、どうせだったら、お風呂入ってから帰るとかにしたら。ほら、時間の節約にもなるし、シャンプーとかも使えるし! ……って、私、何言ってるのかな。せこいよね、ごめん……」
愛菜ちゃん、あんた……
女神か……!