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《おそ松さん》クズでニートな君が好き(R18)

第8章 おねがい♡サマー仮面【カラ松】


「そのグラスはね、ペアなんだよ」
おばさんがニコニコと私たちに声をかけた。


「ペア?」
顔を上げると、おばさんは同じ形のグラスを私に差し出す。


「こっちのグラスとね、対になってるんだよ。二つのグラスをくっつけてみて」


おばさんから受け取ると、私は二つのグラスを合わせてみた。


透かしの花びら模様が合わさり、大きなハート形が浮かび上がる。眩い太陽の下で青く澄んだハートはキラキラと輝いた。


「悪いけど、このグラスはセット商品だからペアでしか売れないんだよ。そちらの彼氏さんとお揃いで買ったらどう?」
おばさんがサマー仮面と私を交互に見る。


「おおっ、そうだな。一緒に買おう、ハニー!」
サマー仮面が声を弾ませた。


お揃い……。


途端にあの日のコーヒーカップが頭に浮かんだ。


彼氏の上で喘ぐ女性。カップの縁に無遠慮に付けられた口紅。部屋を飛び出した後の身を切るような北風の冷たさ。泣きながら帰って辿り着いた真っ暗な部屋……。


あのカップは私とお揃いだったのに。散々悩んで時間をかけて選んだのに。


忘れかけていた感情が一気に押し寄せてくる。


私はゆっくりと息を吐いて気持ちを落ち着かせると、そっとグラスを元に戻した。


「ごめんなさい。やっぱり、今日はやめておきます……」


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