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第1章 1




「・・・恵梨、最後に何か変な言葉が入ってないか?」

「変な言葉?」

「羊が1匹・・・の、後」

恵梨は少し考えてから、また不思議そうに言った。

「『めぇ~』ですか?」

「そうや。・・・・・・『めぇ~』って・・・」

「羊の鳴き声ですよ。分からなかったんですか?ka-yuさん」

恵梨の声が跳ねる。
どうやらそれは驚きを表しているようだ。
いや、いくら俺が馬と鹿のコンビでも、さすがにそろ分かるで?
分からないのは、何でそこで羊の鳴き声が入るのか、やねん。

「羊の鳴き声を入れる意味はあるんか?」

「え?だって途中で羊か山羊か分からなくなったら、大変じゃないですか」

「・・・・・・・・・は?」

恵梨の予想外の返答に、俺は口を開けたまま呆けてしまった。
電話の向こうでは、恵梨が、うんうん、と自信たっぷりで頷いているらしい。

「・・・・・・恵梨、羊と山羊は鳴き声が違うんか?」

「羊は『めぇ~』、山羊は『べぇ~』、です」

やっぱり自信たっぷりで答えた恵梨。
───なぁ、yasu。
俺以上に馬と鹿のコンビが、がっちりと腕を組んどる奴が一人、ここにおるで?


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