第1章 1
6回目のコールで、そのケータイの持ち主は電話に出た。
「・・・・・・もしもし?」
何となく寝惚けたような、くぐもった声。
(・・・やっぱ寝とったんかな・・・)
「恵梨?俺やけど」
取り敢えず名乗ってみる。
名前は言ってないけどな。
「こんな時間に・・・どうかしたんですか、ka-yuさん」
眠そうに訊いてから、名前を言ってないのに俺が誰なのか言い当てた恵梨。
俺は、んー、と言いながら頭を掻いた。
「明日もお仕事あるんですよね?確か・・・シングルの初回特典の打ち合わせが・・・」
「・・・よく覚えとったやん。ビックリしたんやけど」
「まぁ・・・マネージャーですから、一応」
満足そうに、否、当たり前というように恵梨が答える。
「で、どうしたんですか?」
「いや・・・別に大したことやないんやけど・・・・・・」
「はい、何でしょう」
「・・・・・・眠れへんのや」
「・・・・・・眠れへんのですか」
恵梨が関西弁で返してきた。
俺は無言で小さく頷く。
電話の向こう、恵梨は黙りこんだ。
そして。