戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第13章 葵の巻―光秀中将-<R18>
お文の字はあくまで優美で高雅。
私を労わる言葉が並ぶけれど、ただ、それだけ。
私を愛してくださる歌は、ない。
それは、私を愛していない証拠…
自分のせいだけど、悲しみが深く私の心をえぐる。
遠くから兄と光秀様が管弦の遊びを始められたようで、楽の音が聞こえてきた。
女房達が途端にそわそわしだす。
貴女達の気持ちはわかるわ、そちらに行きたいのでしょう?
私は自分の心に蓋をし、女房達に言う。
「私は休みます。おまえたち、兄と光秀様のところへ楽を聞きに行っておいで。でも粗相のないようになさいね」
「…はい…っ、ありがとうございます、舞姫様」
上ずった声で礼を述べる女房達。
その率直な言葉を伝えて、私の代わりに、光秀様を喜ばせておくれ。
貴方の正妻は冷たく感情の無い女だけど、仕える女房は可愛げのある優しい女達。
そう、思ってくださって、良い。そう思おう。
私は一人御帳台に入り、一人衾を掛け、一人目をつむる。
闇の中に溶けて、このまま消えてしまえば、あのかたは悲しんでくださるかしら…