第13章 葵の巻―光秀中将－＜R18＞

光秀様に抱きしめて欲しい。

でも…どうやって、この苦しい心を伝えれば良いの？

わからないから、今日も私は無表情で、光秀様のお越しに答える…



私がいながら、光秀様は他の女人と名を流されていく。

前の東宮に入内なさっていた、六条にお住まいの高貴なかた。

どこぞと知らぬ身分低い娘。

私の女房にもお手をつけられたのも存じてます。

二条のお屋敷に女君をお住まいになられたと聞いた時は、からだの血が逆流し、くやしさから倒れて死んでしまえれば、と思った程だわ。

でも涙すら出ない。

どうして？こんなに悲しくて苦しいのに。

私はいつまで、こんな想いをせねばならないの？

光秀様を想えば想う程、光秀様は他の女人と深い関係をお持ちになる。

私がどんな想いをしているか知らないでしょうね。

無関心と私の事をおっしゃるのも存じてますもの、そうじゃないのに。

私は、私の矜持とどう折り合えば良いのかわからなくて、一人心の中でもがく。

誰か、誰か、私の心を伝えて、光秀様に私の素直になりたい心を伝えて欲しい。

でも、誰も私の澄ました顔から、そんな事を考えているとは、思わないでしょう？