戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第11章 源典侍の巻―幸村中将-<改訂>
と俺は言うが、佐助少将は俺の腕を着替えさせないよう押さえた。
「せっかく逢瀬の証拠をつかんだんだ。このままでいたほうが、幸に憧れる女房達にも恋人は源典侍ってわかりやすいんじゃないのか?」
「恋人じゃねぇし!それなら、おまえも脱げよ!」
俺は笑ってそれならと佐助少将の直衣を脱がせようとするが、ちょっと力を入れただけで縫い目からビリビリと佐助少将の衣装が破ける。
お互いに着させない、脱げとやりあった為、ますます装束がボロボロになってしまった。
その姿を見て俺達は大笑いし、結局「さぁ行こう」と源典侍の存在を最初からなかった事にし、源典侍を遠ざけるようにその場から去った。
そして次の朝、源典侍から文と衣装が届いた。
恨みても言う甲斐ぞなき二つ波 引きて帰れば名残りとてなき
波のように次々とやって来ては帰っていったおふたりには、恨んでも何の甲斐もありません。
荒立ちし波に心は騒がねど 招き寄せけん磯をば恨みぬ
荒々しく暴れた佐助少将には驚きませんが、それを寄せつけた貴女という磯をどうして恨まずにはいられませんでしょうか。
そう俺は返歌し、届いたものを見ると帯が違っているのと直衣の袖先がない。
つまり佐助少将の装束が届いてしまったのだ。
すると佐助少将から袖の切れた分が届いたので、俺は帯と破れた袖先を送りかえしてやった。
その後、宮中で会った佐助少将は、俺が返した縹色の帯を身に着けていた。
「お互いの秘密を共有出来て面白いな」
佐助少将はすまして俺に話しかけてくるが、俺は横を向いてふくれた。
「俺は面白くないけどな」
そして、俺たちは興味本位で寝てしまったおばばさまとの情事を通して兄弟になってしまった事に、顔を見合わせ、ははは、とちからなく笑った。
<源典侍の巻 終>