戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第11章 源典侍の巻―幸村中将-<改訂>
源典侍は男達と対等に管弦の宴の席に参加して琵琶を演奏する腕前で、そんな腕前を持つ源典侍が夏の宵の中、催馬楽(さいばら)を歌っていた。
トシはいっていても、歌声は哀調を帯び美しくしめやかな宵に相応していた。
琵琶の見事な弾奏と催馬楽を歌う声が、やがて余韻を残して終える。
静寂が周辺を包み、俺は思わず催馬楽の『東屋(あずまや)』を口ずさむ。
東屋の 軒の庇の その雨しずく 濡れて乞う身よ ここ開けたまえ
すると源典侍が返歌を寄越すが、相変わらずあけすけな態度に、俺は苦笑する。
それでも『開けて』くれた典侍と二人の時を過ごしてしまう。
ああ、そうだ。
『開けて』くれた礼に、俺はこともあろうにおばばさまを抱いてしまったんだ。
どんな感じだったかって?
そんなのは言う事じゃないだろう?
でも俺ははっきり言って後悔した。
全くおばばさまを相手にするなんて俺はどうかしていた。
ふと、肌寒さに俺は目が覚める。
妻戸が開いて源典侍を愛する老境の男が訪れたのか、と俺は脱いだものを手にし屏風の後ろに隠れた。
しかし源典侍の側で、囁く男の声が聞こえるはずが何も聞こえない。