戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第11章 源典侍の巻―幸村中将-<改訂>
およそ貴族でありながら、貴族とは縁遠い発言をする俺だ。
本来の上流貴族は蹴鞠はたしなむが、馬に乗ったり弓をひいたりはまずしない。
「幸は男らしいからなあ」
そう言って、同情するような眼差しで佐助少将は俺を誘ってくれた。
「どうする?俺のところで飲み明かそうか?」
あぁ、一晩佐助少将に愚痴を聞いて欲しかったなぁ、そう思いながら残念だと俺は断る。
「今宵は宿直(とのい)なんだ。また次に飲もう」
佐助少将はそれは仕方ないなと言ってしばらくして自邸へ戻って行き、俺は桐壺の自分の宿直所(とのいどころ)に入った。
そして、朝。
俺は帝が清涼殿(せいりょうでん)の手水(ちょうず)の間で、朝のお髪を整えているところに侍っていた。
御梳櫛(みけずりぐし)という身支度を整える女房は、今日は源典侍の当番だった。
帝は髪を整えると、御袿(みうちぎ)の蔵人(くろうど)を呼んで衣服を整え、手水の間を出ていかれた。
残ったのは源典侍と俺。
源典侍は、俺の亡くなられた桐壺更衣と呼ばれた母上よりも、ずっと年上のはずだ。
だが整髪の具を片付けている源典侍の後ろ姿が思った以上に若々しく美しく、俺は悪戯心を出し『この女は本当に噂どおりの色好みの女なんだろうか』と、裳(も)の先を引いてちょっかいを出してしまった。