戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第9章 朧月夜の巻―家康中将-<R18>
全く自分がした事で赤くなって、本当に可愛いと家康中将は思う。
「舞」
もう暁を迎え、家康中将はこの場から急いで去らねばならない。
「また、会おう」
返事の代わりに、舞は問い掛ける。
儚くてこの身消えなばそのままに 草の葉陰も訪わじとは思う
家康中将も返す。
いずれかと露の宿りを訪う前に 小笹の葉裏風の知るらん
女房達は何も聞かない振りをする。
家康中将は後ろを振り返らず、弘徽殿を出て行く。
外へ出た家康中将は、弘徽殿から桐壺の自分の宿直所へ向かう。
宿直所の部屋は入ると、交換した舞の扇を広げる。
檜扇(ひおうぎ)に表白、裏紫の三重がさね。
香るのは舞から燻っていたのと同じ、侍従(じじゅう)の香。
舞とは、きっと、また、こうなるだろう。
家康中将は確信する。
兄でありながら、産まれながらの東宮そして帝。
家康中将が渇望してもなれない地位へ昇るおとこへ、おんなを奪うという静かな復讐を開始するのだ。
〈朧月夜の巻 終〉