戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第55章 移りゆくとき ―明石の上&謙信源氏―<R18>
勿論そのようなはしたない事は言わないし言えない。
謙信様は都で女人だけでなく、帝を始めとして大勢のかたに待たれているかた。
だから、今、私だけの謙信様になってくださっている今だけ独り占めするの。
こうして愛される時だけ、謙信様は私だけのものになってくださる。
そして私は謙信様が私に注いでくださる全てを自分のものにするの。
欲にまみれた醜い感情は、心の中だけに留め、あくまで私は謙信様の前では順従なおんなであるよう演技する。
いいでしょ、それくらい。
私は自分の腹を痛めて産んだ娘を都の女人に取られたんだもの。
私の娘は私が側で成長を見たかった。
でも姫の父が光源氏となると生き様が全く変わってしまう。
高貴なかたに預け都で育てていただいて、将来入内して子を産みその子が帝になるような事があれば…それこそ父が大望を抱いた理由なのだから、父の執念が形になったのだと思うと、そら恐ろしい気もしてくる。
姫を私から奪った紫の上様が憎くないと言ったら嘘になる。
でもこのかたは高貴な家の出でいらっしゃるし、なにより謙信様が一番に愛していらっしゃるかただから、このかたに姫をお渡しするのが最高の養育となるのはわかっている。
だから、無言で私は圧力をかける。
姫を私から奪ったのだから、謙信様をこの時は独り占めして良いでしょう?と。
会った事もない紫の上様に、この時ばかりは優越感を抱く私の心は醜いと思うばかり。