戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第55章 移りゆくとき ―明石の上&謙信源氏―<R18>
謙信様は知らずに目の前の私を全身で愛してくださる。
私も全身で謙信様の全てを私の中に受け入れて全てを呑み込む。
そして…
愛し合う時はあっという間に過ぎてしまい、謙信様は都へお戻りになる。
迎えの人が都から大勢やって来て、私は彼等へ渡す品を用意して欲しいと頼まれた。
これを頼むのは、私を愛人というより妻として周囲に知らしめることを意味する。
私は六条院のかたと同列であると、殿方たちも思ったことだろう。
「都へ来るつもりはまだ起きないか?」
謙信様に問われ、私は首を左右に振る。
「私のような田舎者が都でやっていくのは肩身が狭すぎます…」
「そうか…迎える準備は出来ているからいつでも来るが良い」
謙信様はそう言ってくださり、そして迎えのかたと共に去って行く。
いつまでもここに居て欲しい、とは言えず、私はお送りする。
都に戻れば美しい女人がたに囲まれ、私の事なぞすぐお忘れになるのでしょう。
そう言いたいのを胸にしまい、無言で謙信様の後ろ姿を見送るのだ。
私が都へ移るのはもっと後。
姫の入内が決まり、私は親ではなく後見役として入内に付き添えるのが紫の上様のご配慮で決まり、それは謙信様との間が終わった事を示す事になるのだが、私は男女間の事がもう煩わしく、むしろ姫の世話が出来る事が嬉しくてそれでもう良かった…
時は移りゆき、謙信様の興味も紫の上様や私から、他の若い姫へ移る。
むしろ私は男女の縁が終わって、姫、いえ、弘徽殿の女御様と申し上げなくてはならない身に昇られた娘や若い女房たちを監督する立場でいることのほうが幸せを感じる。
『おんな』ではなくなった。
しかし私はひとりの人間として生きていける。
しがらみから離れかえって心は軽い。
<終>