戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第9章 朧月夜の巻―家康中将-<R18>
戸締りが緩く、すんなりと引き戸が開いたところがあった。
家康中将は無防備だな、と思いつつするりと中に入り、足を進ませる。
細殿(ほそどの)の局を横切り、弘徽殿の母屋(もや)に通じるところで、柔らかなおんなの声。
照りもせず曇りも果てぬ春の夜の 朧月夜に如(し)くものはなき
そっと出て、家康中将は彼女の袖を捕らえる。
春の夜の情けを知れば照る月に 朧げならぬ契りとぞ思う
家康中将は囁き、おんなのからだを抱き上げる。
からだを固くするおんなを抱いたまま、細殿に入りこんで家康中将は更に囁く。
「俺は何をしても許されるから、人を呼んでも困らない。静かにしたほうが良いよ」
おんなは震え、俺の思うがままになる、と家康中将は思ったが。
とんでもなかった。
おんなは家康中将の顔を見て、ぱっと瞳を輝かせた。
「貴方は…家康中将様ね!」
その弾む声に、むしろ家康中将がまゆをひそめる。
「…だったら、どうなの」
家康中将が答えた瞬間、おんなの様子が、変わった。
「だったら、話しが、早いわ」