戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第54章 はじまり ―葵の君&光秀源氏―
私の言った事に光る君は目をぱちくりさせる。
「あぁ、すまない…俺はそういうの知らなくてな…とにかく今日、左大臣の開く宴に出席して、そのままこちらの女房に案内されたところへ行くように言われたのだ」
私の言葉に驚きつつ光る君は続ける。
「…左大臣邸のどこへ行くのかと思ったら、姫君のところへ行くように頭中将殿に言われて…それで、ここに来たのだが」
光る君もどうして私のところへ行かなくてはならないのか、把握していないらしい。
それにこの様子では、御帳台の中で行われる男女のことについて、私もそうだけれど、少年の光る君が知る由もなさそうで、乳母が私に「殿方に任せて…」が全く意味の無い事がわかり、内心おかしくなってしまう。
でも光る君の前で笑う訳にもいかず、私は小声で仕方なく状況を教える事にする。
起き上がり、光る君に「もうちょっと側にお寄りなさい」と声を掛けると、じりじりと膝を寄せてきた。
そして兄から聞いていた事を光る君に伝える。
光る君の立場が非常に危うい事を言うと、ぽかんとした表情で何故?と首をかしげる。
その表情はとても可愛らしいけれど、私が理由を説明すると、その可愛らしい表情が凍った。
「右大臣様や弘徽殿女御様に、あまり好かれてはいないと思っていたが…確かに姫君の言われる通りだ…俺があまりに父帝様に可愛がられていては、東宮様や弘徽殿女御様はおもしろくない…」
ようやく状況を理解した光る君は、私と結婚する事実を作るためにここへ来させられた事を知り、困ったと小さく言って私に言った。
「…すまない。まだ出来る年齢では無い…」