戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第54章 はじまり ―葵の君&光秀源氏―
光る君の態度に私も意味がわからないものの、何となく余裕を持つ。
「いいわよ、とにかく光る君が私のところにいる事が重要なんですもの。ここで少しお話ししましょう」
そしてせっかくだからと、光る君の口から、おかあさまの桐壺更衣様や育ててくださったおばあさまのこと、ふたりに早くに先立たれた寂しい生い立ちを聞いた。
父様と母様に愛され、女房たちに囲まれ、何不自由なく育ってきた私と同じと思っていたのに…
寂しいかたなのね、そう思い自然と光る君をぎゅっと抱き締めていた。
私自身がその行動に驚いてしまい、だけど、光る君も私に驚きつつ、そっと両手を伸ばして私を抱き締めてきた。
幼く細い両腕に、頼りなさげな不安の残る思いをこめたように私を抱く光る君に、私はこのかたとなら正式な夫婦になっても仲良く出来るのでは、と思った。
そして、私たちは三日間夜を一緒に過ごすものの、この時点ではまだ何も無く、正式な夫婦になるのは数年後になる。
この時抱き締めた光る君のからだの細さ、私を抱き締めた光る君の腕の細さを忘れずにいた私は、正式な夫婦になる時の、光る君の成長して変わったからだに驚くしか出来なかった。
殿方のからだってこんなに変わるの…私を甘美な世界へ誘う光る君は年下とは思えず、いったい誰に教えてもらったのかしら、と気になってしまい聞くと、光る君は優しく言った。
「俺の乳母だ…おとこについた乳母は、育てた子にこういったことも教える…年の変わらない女人を相手にするのは貴女が…初めてだ…」
それから薫という子が出来るのは数年後で、私は時折光る君の浮気心に悩むものの、仲良い夫婦として過ごし、東宮へ入内して他の女人と寵を争うより、穏やかな日を過ごしていくのだった。
<終>