戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第54章 はじまり ―葵の君&光秀源氏―
来た、と私は自分の身を堅くする。
乳母からは「全ては殿方にお任せして…」と言われているだけで、光る君が私のところにきたところで、具体的に何がどうなるのかは実は知らない。
ただ、何か大きな変化が自分の身におこる、という事だけ知っている。
初めて不浄なるものが身におきたときに女人は罪深き生まれ、と乳母から教えられただけなので具体的なことは一切知らない。
全ては殿方にお任せするのみ…
私は高鳴る鼓動を抑えるように横になったまま、深呼吸を数回する。
あたりに、聞いた事の無い香がゆらりとたちのぼる。
もたつくように誰かが御帳台へ入り込んできて、横になっている私の側へまっすぐにやってきた。
「…こんばんは」
少年と言って良い高めの小声がすぐ近くから聞こえる。
私は目覚める振りをしてから「…ど、どな、た…」と震えてみせる。
「…葵の君…だな…突然すまない。貴女に会うように言われてきたのだ」
光る君は私より四歳年下なはずなのに、悪いと思っていないわね。
でも、可愛らしい声で話し掛けてくるので、夜なのにまるで華やいだ宴の中にいるような雰囲気を醸し出し、こどもだから大人の配慮が出来ないのね、と心持ち安心する。
そして私は小声で言う。
「光る君、貴方、声が大きいわ。こういうところに来たら声は小さくしないと。それに、そんな明るくさわやかに話し掛けるものではありませんわ」