第53章 貴方と私を繋ぐもの　―佐助ノ君＆八ノ宮大君―＜R18＞

「やっぱり私が自分のちからで縫いあげたいわ…」

朝になり佐助が戻ってから、舞は縫い物を続けていた。

「舞様、少しおやすみになられませ」

女房が心配そうに声を掛けてくれるものの、舞は手を動かしながら「いいえ」と答える。

「佐助くんの誕生日まで日にちがないの。休むときはちゃんと休むから大丈夫よ」

昼間とはいっても平安時代の貴族の女人は、几帳をひきまわした暗い部屋の奥深いところにいるので、目を凝らしながらの作業となる。

舞も明るいとは言い難い中、ひと針ひと針縫うのを進めていった。



そして、数日経ち、佐助の誕生日が訪れる。

「本当に宴は開かなくてよろしいのですか？」

女房が驚いて舞に聞く。

「そうなの。お客様をお呼びして、と思ったのだけど、佐助くんが今年は誰も呼ばず、静かに過ごしたいそうなの」

舞の言葉に女房は合点がいったようで、ひとりで頷きながら「それでは」と言う。

「佐助様と舞様のお二人がゆるりと過ごせるよう、私共は支度致しましょう」

「そうしてくれるかしら？」

舞の言葉に「かしこまりました」と女房が下がっていき、出来上がった佐助への贈り物を手にした舞は手元の硯箱にそれを仕舞う。

そして別な女房に「着替えます」と命じ、舞は衣装を改めるのだった。