戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第52章 貴女には頭があがらない ―秀吉中将&若紫―
「ずいぶんご機嫌が悪くなってしまったな」
秀吉は舞の髪をひとすくいすると、その持ち上げた髪の束に口付ける。
「黒くて艶やかで美しい髪だな…機嫌直して…おいで」
秀吉はまだ少女のからだを引き寄せ抱き締めて、肩口に顔を埋める。
「…おにいさまったらくすぐったいです」
肩をよじって笑いながら逃れようとする舞に、それでもそのまま逃さないとばかりにちからをこめて抱き締めるままの秀吉に、だんだんと恐怖を覚える舞は声を小さくして「こわい…」と言うようになってしまったため、気付いた秀吉は慌てて肩から顔をあげた。
真っ赤な顔をして泣きそうにしている舞を見て、舞はまだおんなのしるしも迎えていない少女である事に気付き、謝ってなだめ始める。
「あぁ、悪かった。俺のいたずらがすぎて舞を怖い目に遭わせてしまったな」
頭を撫でてそれでも恐怖の色を面に表している舞に、違うことを考えさせるために提案する。
「あぁ、そうだ、舞が今さっき遊んでいた人形の屋敷だが…紙のものではなく、ちゃんとしたものを作らせようか?」
途端、舞はぱあっと顔を輝かせて嬉しそうに言う。
「ほんと、おにいさま?人形のおうち、作ってくださる?私ね、ずっと人形のちゃんとしたおうちが欲しかったんです。でもみんながおにいさまはお忙しいから、おねだりしちゃいけませんって言うから頼めなかったの」
「よしよし、すぐ気付かなくて悪かった。すぐ作らせような。これからも欲しいものがあったら我慢していないですぐ言いなさい」
舞の機嫌が直って内心ほっとする秀吉だった。