戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第52章 貴女には頭があがらない ―秀吉中将&若紫―
すると別な女房がたしなめるように言う。
「舞様はそのような事を存ずる必要はございません。秀吉様は位も高うございますし、その分たくさんの女人の生活をお助けする事もなさっていらっしゃるのですよ」
女房の言葉に舞は小さい口を咎らかせると、桃色の細長を着た舞は益々幼く見えるような表情となる。
「おにいさまが偉いかたなのはわかってるわよ。でもおんなのひとの生活を助けるために契るなんて、人の足元見ているようで嫌だわ」
「舞様、それはそれ、これはこれ、ですのよ。おとなのことに口を出してはいけませぬ」
「あっそ」
女房に怒られ、ぷいと横を向く舞だった。
日中ひとりで紙で作った人形遊びをする舞に、着替えてひとやすみした秀吉が顔を見にやって来た。
「何をしているんだい?」
「人形遊びですわ、おにいさま」
秀吉のほうを見もせず、右手と左手に持った人形を動かし一人で会話をさせる姿に、秀吉は幼いがその横顔が美しいと見惚れる。
「…舞は綺麗だな…」
うっとりするように秀吉は言い、舞の重く黒い髪の毛を何度か撫でた。
「…おにいさま、ずいぶん狎れ狎れしいのですね」
つっけんどんな声で指摘する舞は、秀吉には、一晩他で過ごした事を怒っているようにしか見えないのだった。