戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第52章 貴女には頭があがらない ―秀吉中将&若紫―
「おにいさま、お帰りなさい」
まだ秀吉が自分のものにする前の頃の若紫こと舞は、無邪気に朝帰りの秀吉を出迎える。
「あぁ、一人で寂しかったか?悪かったな」
大きな手でがし、と舞の頭を撫でると、着替えるからと自室へ向かう秀吉に、舞は敏感に聞き取った事をぼそりと呟く。
「おにいさま、香がいつもと違うわ。どちらかで違う香を焚いたのですか?」
まさか、他のおんなのところで一晩過ごしたとは言えない光の君こと秀吉は、ごまかすように笑みを浮かべると言った。
「一晩、宮中で宿直(とのい)に入っていたからな。宿直を一緒にした者の香が移ったのかもしれないな」
ふぅん、と口を咎らす舞に内心『おまえが早く成長して俺の相手になってくれれば、他のおんなのところで過ごす事もないんだがな』と思いつつ、自分の言葉をそのまま信じる舞を可愛いと思う秀吉だった。
「おにいさま、本当は違うんでしょ?」
女房にぴしりと舞は言う。
聞かれた女房は背を伸ばし「はて?」とごまかすように首を傾げる。
「本当はおにいさまは宿直ではなく、どちらかのおんなのかたとご一緒だったのでしょ?あの移り香は殿方の使われる香りではなく、どう聞いてもおんなのかたが使うような香りだったもの」
「舞様…それは…」
女房が口ごもると「やっぱりね。知らない事でもないのよ?」と肩をすくめる舞だった。