戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第7章 若紫の巻―秀吉中将-
三日目になり、夜着を相変わらず引き被ったままの舞姫に、秀吉中将は説明する。
「見なさい、これは三日夜の餅だ」
夜着をそっと引き上げ、ちらりと目だけ動かして餅を見る舞姫。
「俺の話しを聞きなさい」
ひとくちでも食べてもらわないとならない為、命令口調で秀吉中将は舞姫に言う。
「俺たちは今回結ばれた。おまえには急でわからない事だらけだろうが、舞姫は俺の妻となり、夜が明ければ正式に『上』と呼ばれる身分になる。
この餅は三日夜の餅と言って、正しく結ばれた男女が、初めての契りの夜から三日目の夜に、固めの印に口にするものだ。
俺たちは夫婦になった。だから、おまえはこれを食べなくてはならない。
とにかく一口で良いから、食べなさい」
聞いた舞姫は、ようように夜着を払い、起き出す。
そして舞姫は、しばらく無言で、しかし、ようやく箸を取り、餅を一口、口にした。
秀吉中将は、舞姫の残した餅を口にし、ここに藤のゆかりの姫を妻として迎えた。
秀吉中将は、西の対を去る時、女房に帳台の枕元のものを下げるように言いつける。
これを見れば、女房達には、舞姫に何が起きたか気付くはずだ。
女房は、正式に舞姫を妻として迎えてもらった事に感謝の涙を流した。
だが、乙女の殻を破られたばかりの舞姫は、まだ、御帳台から出てこない。
秀吉中将は去りながら、どうやって舞姫のご機嫌を直してもらおうかと考え、そしてやっと自分のものにした姫の、今度はゆっくりとからだを自分好みにしていく事に喜びを密かに覚えて、緩みそうになる頬を引き戻す事に集中していた。
〈若紫の巻 終〉