戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第7章 若紫の巻―秀吉中将-
そして、翌朝。
当然のように、乙女は御帳台から出てこないー
小夜衣(さよごろも)重ねし夜のその中に あやなく胸を隔てけるかな
女房達は起きてこない舞姫の様子をいぶかしむ。
一度東の対に戻った秀吉中将が、昼になって西の対を訪れる。
舞姫は、『おにいさまがあんな恐ろしく、あさましい、恥ずかしいことをなさるなんて』と恐れと羞恥、怒りや悲しみの混ざった感情で、汗びっしょりとなったまま夜着(やぎ)を頭まですっぽり被り、秀吉中将と顔を会せようともせず、小夜衣の返歌も無論しなかった。
二日目の夜は、触らないで、と言わんばかりに秀吉中将から逃げようとする舞姫。
秀吉中将は苦笑しながら、舞姫の機嫌を直すのにいろいろ言葉を尽くす。
「誰もがすることだ、おまえもそのうち慣れる」
慣れたくない、と舞姫はますます夜着を引き被る。
その日の夜、亥の子(いのこ)餅が届けられる。
神無月最初の亥の日に、小さい亥の子の形に調製した餅を食す。
無病息災、長寿安泰、子孫繁栄が叶えられるらしい。
秀吉中将は三日夜(みかよ)の餅の用意を思いついた。
夜更けて、惟光に持ってくるよう頼んだ三日夜の餅。
おとこがおんなの許へ通い、契りを結び、その事が成就する三日目の夜、おんなの家では餅をついておとこと娘の枕元に出す。その新婚の礼を行わないと、正式な妻と認められないのだ。