戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第7章 若紫の巻―秀吉中将-
亡き大納言の屋敷にて、兵部卿の宮の使いが、幼い少女を迎えに来た時、既に少女は二条へ連れて行かれた後だった。
残った女房達で舞姫と共にいなくなった女房が、少女をどうかした、という事にしたらしい。
兵部卿の宮は、亡くなった尼祖母が、孫を自分のところに渡すのを嫌がっていたから、その女房が独断に走った、と思うしかなかった。
しばらくして、二条の西の対に女房が集まり、華やかな活気が生まれてくる。
秀吉中将は、舞姫の雛人形に屋敷まで特別に作ってやり、すると、屈託なくのびのびと遊ぶようになっていく。
無論遊んでばかりでは、困る。
幼い時分から連れてきたは、秀吉中将好みの女人になってもらう為だから。
秀吉中将は歌や絵を書きつけたものを、手本として舞姫に渡していた。
その一枚である、匂うような紫の料紙に書いた「武蔵野といえば嘆きの」を、ある時舞はじっと見つめていた。
武蔵野といえば嘆きのかこたれぬ 一本(ひともと)ゆかりの紫のゆえ
そして一首、この歌の横に秀吉中将は書きつける。
ねは見ねどあわれとぞ思う武蔵野の 露分けがたき花のゆかりを
「紫草の根は、紫色をしているんだ」
秀吉中将が言いたいのは、舞姫は藤のゆかりの紫の姫君という事。
秀吉中将に返歌を書くよう言われ、横を向いて何やら書き出す舞姫。
「失敗しました」