戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第7章 若紫の巻―秀吉中将-
その少女を初めて見掛けたのは、瘧病(わらわやみ)治療のため、霊験あらたかという僧都(そうず)のもとへ行った北山で、だった。
到着してから時間だけはたっぷりあるので、惟光の提案で庵(いおり)周辺を散策する。
都ではすでに散った桜が、北山では満開だ。
一枝折り参らせ、藤壺の宮への文をつけて送るとしよう。
ある庵の近くを通りがかると、甲高い、この場には不似合いな少女の声が聞こえてきた。
白い袿(うちき)の上に山吹襲の表着(うわぎ)をかけている、十歳程の少女。
「雀の子を犬君(いぬき)が逃してしまったの」
祖母と思しき初老の女にすがりつく少女。
その顔を見た時、秀吉中将の全身に衝撃が走った。
―似ている。
まごうかたなきあのかたに、この娘は似ている!
あの少女を手に入れたい!
初老の女の縁につながる僧都と会い、どういった身分の人か確かめる。
「以前、按察使(あぜち)の大納言を勤めた者が亡くなりましたが、その北の方でおりましたおんなが私の妹です。
大納言が亡くなって尼となりましたが、他の頼る者のない心細い身でございまして、私を頼って参り、ここに居るのでございます」