戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第39章 友 ―秀吉少将&光秀中将―
「…さぁな」
「ちょっとこっちに来い」
ぐい、と狩衣(かりぎぬ)を引っ張り、秀吉は光秀を几帳で囲まれた廂(ひさし)の間に連れていく。
「おんなに連れ込まれるなら嬉しいのだが…」
「俺もおまえを連れ込みたくないぞ」
秀吉は自分より少し背の高い光秀を塗籠(ぬりごめ)の壁に追い込み、両手で光秀の頭を覆い、動けないようにする。
「…いったいどういう事だ?俺もとうとうおとこに襲われるようになったという事か?」
秀吉をまっすぐ見て、くつくつと光秀は笑いながら言う。
「男にこういう事をされる趣味はない」
「俺も男にこういう事をする趣味はない」
同じように秀吉も言い、更に続ける。
「そういう事じゃない。俺はおまえがいつも一人で危険な事をしているのが心配なんだ。帝から、どういう訳かおまえは、いつも危険な任務を賜っているそうじゃないか。もっと下っ端の者がやりそうなものまで引き受けていると聞いている。どうしてそんなに一人で抱えるんだ?…俺を頼れよ?俺は頼りにならないか?」
「…秀吉」
一気にまくしたてた、人たらしと別名のつく、友の優しさを改めて知る。
しかし、光秀には彼なりの考えがある。
『秀吉には陰の道を歩ませたくない』