戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第37章 浮舟の巻―信長ノ宮と秀吉ノ君-<R18>
案内された部屋でようやくひと心地ついた舞に、小野で面倒を見てくれた女房がここでも付き添う。
「舞様、右大将様がお越しになりますので、お髪を直しましょう」
化粧を直され、更に美しく見える舞に女房が言う。
「舞様に何があったかは存じませんが、右大将様は殿方の中でも珍しい程、誠実なかたです。右大将様を裏切らず、尽くして差し上げてくださいませ」
「…」
女房は舞が信長こと匂ノ宮と何か有った事を知っている訳ではないだろう。
しかし、この言い方は何かを知っているようで舞は反論したくなった。
「…何をおっしゃっているのかわかりません。ですけれど、秀吉様がご誠実なのは存じておりますし、それに私は応えたいと思っておりますわ」
ずっとだんまりの流される性質の娘と思っていたので、女房ははっきり言い返してきた舞の強い(こわい)部分に内心驚くが、それを面に出す事なくあしらう。
「それでしたらよろしいのですわ。おや、先払いの声がしますわね、お越しになったようです」
ざわつく邸内、そしてしばらくして人が歩く音がし、目の前の几帳が引き上げられ、烏帽子に狩衣姿の秀吉が姿を見せた。
秀吉は控える女房に、持っていた扇で外へ出るよう示し、女房は静かに部屋をいざり出て行き、残ったのは秀吉と舞だった。
舞は頭をさげて控えていたが、目の前に人の気配がしたと思ったと同時に、懐かしい腕に抱き締められていた。
「舞…生きていたか…」
「…ひで、よし…さま…」