戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第37章 浮舟の巻―信長ノ宮と秀吉ノ君-<R18>
お迎えの日が待ち遠しいですわね、そう言って女房は微笑んだ。
女房の持ってきた文を開くと、早く会いたい、と秀吉からの熱心な言葉が書かれていて、舞は自分を愛してくれているのは秀吉なのだ、と改めて思う。
信長からは一切の連絡も当然だが無く、自分ではなく、きっと新しい恋を探しているのだろうと予測出来た。
陰陽寮に良き日を占わせ、いよいよ都へ移る日になる。
今迄用意が無く、尼のものを着ていたので地味な色合いものだったのが、秀吉より贈られた撫子襲の衣装を着ると、美貌がひきたち周囲も華やいで見えた。
「まぁ、何てお綺麗なのでしょう。右大将様もお喜びになられますわね」
尼と女房が話しているが、舞は小野に来てから髪の毛の先が細くなったようで、それが気になっていたが言う事も出来ず無言でいた。
そして迎えの牛車が到着し、小野を離れる時が来た。
「尼君様、長い間お世話になりました。どうぞばば様ともご息災でいらしてください」
舞が挨拶すると、尼は涙を浮かべて言う。
「ずっとこちらにいらしてくださると思っていたのですけどねぇ、でも右大将様というちゃんとした後ろ盾のかたがいらっしゃるのですから仕方ありませんねぇ…どうぞお幸せにね」
そして舞は牛車に乗り込み、ゆるゆると都に向かって歩み出す。
秀吉によって用意された邸はこぶりながら女人一人が普段暮らすには程よい大きさだった。
住みやすいように改装され、季節の草木が庭に咲き、涼し気な几帳も風に揺れていた。
舞は牛車から降り、美しく支度された邸の中を、雲の上を歩くかのようなおぼつかなさで部屋まで案内されていった。