戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第37章 浮舟の巻―信長ノ宮と秀吉ノ君-<R18>
小君は文を几帳の下から差し入れ、何も言葉を発さない舞へ言う。
「早々にお返事をいただき、持ち帰りとうございます」
尼が舞の代わりにその文を手に開くと、秀吉の字で綴られる文字は舞を少々責める内容ではあったものの、やはり愛した女人が生きていたという事が嬉しく、改めて舞を迎えたいと記されていた。
「このお手紙からすると、貴女は秀吉右大将様の恋人でいらしたのね?何らかの事情で記憶を無くされこちらにいらしたのかしら?」
文から秀吉と関わりのあった者と完全にわかられ、尼は小君に話し掛ける。
「このお文でお探しのかたはここにいらっしゃいますよ。ただ今はとても具合がお悪くて、お答えが何も出来ないようです」
尼の言葉に小君は言う。
「それではその旨、伝えたいと申します。またぼくが伺うと思いますので、次はお返事が出来るようお願いします」
「わかりましたわ、せっかく長谷寺からいただいた娘の生まれ変わり。大切にお世話したかったのですけれど、こうなっては仕方ありません。早くこのかたが秀吉右大将様にお引き取りになって、お幸せになられるようお祈りいたしますわ」
尼も小君の言葉に、つい、事情を伝えてしまう。
「さようでしたか、わかりました。主君のところへ早く戻り、その旨伝えましょう」
小君は舞がここに生きているのがわかり、喜んで都へ戻って行った。
「こうして貴女がどんなかたかおわかりになりました。貴女の体調が完全によくなり、秀吉右大将様お迎えがいらしたら、貴女はかぐや姫のように帰ってしまうのですね」
尼はもともと娘の身代わりに舞の面倒をみ出したので、こうして状況がわかると嬉しいと同時に寂しさを覚えるのだった。