戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第37章 浮舟の巻―信長ノ宮と秀吉ノ君-<R18>
僧都は答える。
「領ずるというような家ではございませんが、愚僧の母尼がまだ健在でして、そちらに住まわせております」
すると秀吉はずい、と僧都に近寄り声をうんと低くして問うた。
「そちらに俺の見知った者が居ると聞いた。まだ年若く親も健在で、行方をたったままなので、そちらから苦情が有ったりするのだが、貴方はご存知でないだろうか」
「然(さ)こそ」
僧都は女人の美貌を思い出し、秀吉の言う『見知った者』がその女人だろう、と確信する。
確かな筋から聞いたと思しき秀吉の自信の有る表情に、僧都は当時の事を説明し、秀吉は舞が存命している事を知り安堵する。
そして連れて来ていた舞の父違いの少年を僧都に預け、女人の弟であるから、とりあえずこの少年を小野へ連れて欲しいと託す。
僧都もいきなり秀吉を連れて行くのはさすがにためらいがあった為、女人の弟である少年ならと預かり、少年を小野へ連れて行く事にする。
舞の弟である小君が小野の尼の邸を訪れる。
美しく着飾った小君は右大将である秀吉の遣いと申し、舞宛ての文を持ってきた。
尼たちは事情がわからないので首を傾げるばかりだが、それでも正体不明の娘は、実は右大将に縁の有る者らしいとわかり、仔細はわからないものの舞の美しさならそれも当然と思うのであった。
「このかたは貴女にとってどんなかたなのですか?何かおっしゃってくださらないとわかりませんよ?」
僧都から預かった文を小君は尼に渡し、その内容から少年が娘の弟だとわかり、尼たちは小君に内へ入って舞と直接話しが出来るようにした。