戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第37章 浮舟の巻―信長ノ宮と秀吉ノ君-<R18>
妹尼の献身的な看病により、舞は徐々に回復してゆき、自分の事を思い出してゆくがもう以前のような煩わしい事に関わりたくないと思う舞は、自分の事は全て忘れた、どこから来たのかもわからないとしていた。
妹尼も娘がいなくなっては長谷の観音に詣でた甲斐がなくなり、娘も生きている事すら知られたくないと言うため、正体を知りたいと思いつつしつこく聞く事はしなかった。
「お願いでございます。私は生きている事を知られたくありません。私をどうぞ隠してください」
生きている事を隠したまま舞は尼たちと共に生活をするうち、ある日妹尼の死んだ娘の夫だった中将が、秀吉に縁のある女人が亡くなりその供養のための着物を用意せねばならずこちらで縫って欲しい、と依頼にきたのだった。
秀吉に縁のある亡くなった女人とは、つまり舞。
舞は自分で自分の供養の着物を縫う事になり、縫いながら秀吉と信長の事を思い出す。
今なら自分は二人のうちどちらを選ぶのだろう。
答えは考えずとも決まっている。
信長様の愛は激しく、けれど一時のもの。
あのかたは身分の低いおんなが珍しかっただけだから、新しい人が目の前に現れたら私の事はどうでも良くなって、そちらのかたへ興味が移っていく。
秀吉様は私への愛の温度は低く感じるものの、その低い情熱がじりじりと続いて私を愛される時は長く静かに続いていくと思われる。
私は、今なら、秀吉様を選ぶだろう。
静かな熱が私を包む秀吉様の愛を、冷静になった今の私なら受け入れる。
けれど、私は、もう死んだ身だから、秀吉様に会う術は、もう無い。