戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第37章 浮舟の巻―信長ノ宮と秀吉ノ君-<R18>
信長が舞に文を送る。
眺めやる彼方の雲も見えぬまで 空さえ昏るる(くるる)頃の侘しさ
文の中には『愛しい』『忘れられない』『恋しい』『逢いたい』と甘い言葉を尽くしてあり、これで惹かれないおんなはいないと思わせるようなものだった。
舞は物思いに沈み、返事が出来ずにいた。
秀吉様の事を誰もが立派で申し分ないかたと言い、それはわかっている。
母も私が秀吉様のお世話を受け、引き取られるのを楽しみにしている。
だからこそ信長様からもこうして目を掛けられてしまって、回りはさぞふしだらな娘と思うでしょう。
もし信長様のお世話を受け、秀吉様にそれを知られたら、秀吉様はどのように思うのだろう…浅ましいおんなと思われ、その咎めに耐えられるのだろうか…
そんな中、秀吉からも文が届き、その本人の性格を表したような白い立文に手を取ることもせず信長からの文を手に横になる舞を見て、事情を知る女房たちは目くばせする。
『信長様に心が移られたのね』
しばらくして舞は秀吉の文を開く。
水増さる彼方(おち)の里人如何ならん 晴れぬ長雨(ながめ)にかき昏す頃
女房たちは秀吉の文に返事をするように言うが、舞はなかなか筆を手にせず、それでもようやく一人へ返事をする。
里の名を我が身に知れば山城の 宇治の辺り(わたり)ぞいとど住み憂き
信長との縁は長くは続かないし、この縁は許されるものではない。
舞は重々承知している。