戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第37章 浮舟の巻―信長ノ宮と秀吉ノ君-<R18>
信長は件の娘がどこへ行ったのか気になってしかたない。
「たいした身分の娘には見えなかったが、生真面目なところが面白そうだった」
信長は中君にちくちく「貴様がどこかへやったのだろう?」と嫌味を言うが、中君も娘がどこへ行ったのか知らないので答えようがないのだった。
宇治へ舞を連れて行った秀吉は、舞を住まわす為に都に新しく邸を作っていた。
そして新しい年を迎える。
中君と信長の間に産まれた子は二歳になり益々愛らしく、新しい年を迎えたある日、信長は子の相手をしながら過ごしていたところ、女童が信長の前に受け取った文を持ってきた。
「その文はなんだ?」
信長が問うと女童は答える。
「御方さまの前でご覧になると思い、御前にお持ちするものです。いつも受け取られると、御方さまの前でこの文はご覧になられるのです」
女童は得意げに話しを続ける。
「この鬚籠(ひげこ)は竹を編んで作ったように見えますでしょう?」
と、文と共に贈られた鬚籠について説明する。
手の込んだ贈り物を誰が中君にするのだ、と信長は内心疑問に思いつつ、鬚籠を眺める。
信長は気付く。
あの時の、どこぞに消えた娘からか、と。
「早く返事をするが良い。こう技を凝らしたものを放っておくのは良くない」