戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第37章 浮舟の巻―信長ノ宮と秀吉ノ君-<R18>
「さぁ、行こうか」
秀吉はひょいと舞を抱き上げると突然牛車へ運び、慌てふためく女房たちを尻目に舞を、宇治の八ノ宮の住まいで今は寺へと姿を変えた場所へ連れて行った。
何故、ここへ連れて来られたかわからない、けれど来てしまったものは仕方なく舞は女房と牛車を降りる。
「私はどうなるのだろう…何故、秀吉様は私をここへ連れていらしたのか…」
舞は、母親にも告げずここに来た事を不安に思うが、文を書く願いを秀吉にする事も出来ずにただ黙って秀吉の側にいるだけだった。
秀吉は舞の様子を見て、大君と見た目は似ているものの実際は全く違う舞に、少しがっかりしていた。
「舞もここで育てば、故八ノ宮の雅さをもう少し身につけられたかもしれないな」
などと平気で言うので、舞はあまりな事と思うものの、秀吉には舞を悪く言ったという思いは無く、ただ大君に似ているならば同じようにして欲しいという、ひとがたはひとがたとして振る舞えという何とも傲慢な言い分を押しつけていたのだった。
寄生(やどりぎ)は色変わらぬる秋なれど 昔覚えて澄める月かな
月は澄みそこに変わらず住む人の心も澄み、ただ変わらぬ以前が思い出される。
そんな折り、弁の尼から硯箱に盛られた果物が届けられ、秀吉は返事を送る。
里の名も昔ながらに見し人の 面変わりせる閨の月影
今、ここに居るのは大君が少し姿を変えただけだ。
秀吉の歌は、舞の女房を通して弁の尼へと伝えられるが、事情を知らない女房にはせいぜい「里の名は昔から変わらないけれど、閨の主人になるべき人は変わった」と思うだけだった。