戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第5章 花散里の巻―三成中将-<改訂>
だって、一度しかお話ししたこと、ないのに。
「ほほほ。恋は会った回数ではありませんよ、舞姫」
姉様は優しく何も知らない私に教えてくださる。
―では姉様はどなたかに恋をなさった事があるの?
―現帝へご入内なさる前にどなたかに恋をなさってたの?
こんな事は聞けないけれど、姉様は私の気持ちを知ってしらずか、遠くを見るような眼差しであくまでしなやかに私のこころを受け止めてくださる。
前栽(せんざい)に植えられた草木が、柔らかい風に吹かれて揺れる。
どこからか聞こえる、筝(そう)の琴もいつもと違う音色に聞こえる。
花橘が白いはなびらを震わせて、はらりはらりと舞い落ちる。
恋。
なんて素敵なことば。
でも、現帝の二の宮で他方から大変な人気をお持ちの三成中将様が、何もない私を心に留めてくださるなんて万が一にも無いこと。
自分が三成中将様に恋するのは勝手だけど。
私の恋ごころが三成中将様のご迷惑になるのはいや。
―このこころは隠して、秘密に。
―これ以上、誰にも知られないように。