戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第37章 浮舟の巻―信長ノ宮と秀吉ノ君-<R18>
下手に動くとその間に娘が匂ノ宮の手にかかってしまうと思った乳母は、部屋の隅で二人に何もさせないとばかりにふんばり、他の女房が来るまで見張っていたのだった。
すっかり暗くなり、灯りもない状態の中、一人の女房が格子を閉めに来る。
「申し。おかしな事が起きております」
乳母の言葉に女房は首を傾げるものの、信長の薫りに気付く。
「困った事になりました。対の上さま(中君)に伝えて参りますわね」
女房はわざと大きい声で乳母に言って中君へ知らせに行った。
それでも離れるまでの間、信長はずっと娘を口説く。
「貴様、誰だ?この様子から最近参った女房では無いな?俺が誰かわかるなら答えよ。貴様何故ここにいる?」
娘はどうする事も出来ず、からだを固くしてそのままでいるしかなかった。
ちょうどそこへ宮中より、信長の母である中宮の具合が悪くなったから見舞いに来るようにと信長へ遣いが参り、信長は仕方なく娘から離れるしかなかった。
慌ただしく支度をし信長が宮中へ参内した後、中君は娘を呼び出す。
このような恥ずかしい思いをして中君の前に出るのも気まずかったが、乳母の「伺わなければ何か有ったと、かえって思われます」の言葉に、気をふるって中君の許へ行った。
中君の女房たちは、姿をようやっと見せた娘を大層美しく、これなら信長様が手を出したくなるのも当然だ、と理解する。
中君はそんな娘に優しく声を掛ける。
「姉上が亡くなられて一人になってしまったと思っていたのですけれど、姉上にそっくりな貴女にお会いして私はとても嬉しいのですよ。貴女も私を姉上のように慕ってくださいね」