戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第37章 浮舟の巻―信長ノ宮と秀吉ノ君-<R18>
「どんな身分の高いかたの娘かわからぬが、俺との間の娘を可愛がりもせず、その娘にかかりきりだ」
つまり常陸の守と娘の母の間には娘が複数いるにも関わらず、母がこの娘たちを構わず、自分の連れ子の娘ばかりをひいきするので、それが気に入らなかったのだ。
母にしてみれば、常陸の守との間の娘たちは愛敬はあるものの美しさはなく、ただ金にあかせて身なりを気遣っている程度の者だった。
その娘たちの一人が結婚する事になり、部屋が足りなくなった為、とうとう連れ子の娘の居場所が無くなり、母は八の宮の中君に娘を預ける事とした。
母は違えど父は同じ八の宮。
中君は娘に親切に応対し、娘も中君にたどたどしくしながらも他に頼る人がいない為、中君に頼り切っている姿が何とも愛らしかった。
物忌みで滞在している事にし、ひっそりと邸の片隅に部屋を借りていたのだが、匂ノ宮こと信長に気付かれてしまう。
見た事のない女童に気付いた信長は、彼女の後をついていき、普段使っていない部屋に女人がいるのを知る。
その者は横になり、外に咲く花や遣水(やりみず)の流れをのんびりと眺めており、その姿は最近来たばかりの女房にしては落ち着きが有りすぎ、信長はいったいこの者は誰なのかと興味をひくのだった。
信長はそっと中へ忍び入り、娘の衣へ手を伸ばして言う。
「貴様、誰だ?」
瞬時に娘のからだが強張る。
聞いた事のないおとこの声に驚き、どうすれば良いかわからずうろたえる。
そこへ娘の乳母が戻ってきて変事に気付く。