戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第37章 浮舟の巻―信長ノ宮と秀吉ノ君-<R18>
秀吉は早速弁の尼に依頼し、尼はそのような折りがございましたならば、と答える。
その後、信長ノ宮に引き取られた中君が若君を出産されたり、秀吉ノ君は朱雀院の女二ノ宮を降嫁されたりし、忙しい日々を送っていた。
故八ノ宮の宇治の邸は寺に改めており、その様子を見るために、久し振りに秀吉は宇治へ足を運んだ。
すると田舎びた一行が邸へやって来て、名乗らせると『常陸の守の姫が長谷寺へ参詣に行った帰り』だと言う。
「では、例の故八ノ宮に認められなかった娘なのか…」
秀吉はすぐに誰なのか気付き、来客が既にいるが気を張る者ではない旨、伝えさせる。
牛車を邸の西の廓の端に止めたのを、秀吉はそっと覗く。
女房たちが降り、娘が降りる。
蘇芳の袴が見え、濃い紫の袿の裾が目に入る。
そして袿の上に撫子の細長に若苗色の小袿、と、けざやかな色彩が揺れ、牛車からようよう娘は降りる。
檜扇をしっかりとかざしているため顔は見えないが、姿かたちは亡き大君に似ている、と秀吉は覗き見しながら思う。
部屋に入り、娘は疲れたのかぐったりとしたまま横になっているが、その様子は田舎びたものではなく、愛らしささえ感じられるように秀吉には思える。
弁の尼が挨拶に参り、女房が答える中、娘は気が付き起き上がる。
その姿を秀吉は見た。
『大君…?』