戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第37章 浮舟の巻―信長ノ宮と秀吉ノ君-<R18>
その娘の存在を知ったのは、宇治の故八ノ宮の邸で女房の弁の尼から聞いた事だった。
「亡き八ノ宮様に脇腹の姫がいる?」
薫こと秀吉は、持っていた扇を軽く自分の膝に打ち付ける。
「はい。大きな声では申せませんが、ご正室様がお亡くなりになった後、お寂しさがお有りになったようで、ご正室様に繋がる縁の女房を一時お相手になさってました。ところがその者が懐妊したところで八ノ宮様は何か思うところがあり、一切その者への相手をお止めになり、他の女人とも一切関わりをお持ちにならなくなりました」
年取った尼は、秀吉の生まれの秘密を知る、今となっては母の入道ノ宮を除く唯一の者。
「それでその懐妊した者はどうなったんだ?」
秀吉は問い、女房は答える。
「女子を産んだのですが八ノ宮様がおこさまをお認めにならなかったので、その者はやがて去り、姫を連れて今は常陸の守の妻となっております」
「その姫はもうどこかに縁づいたのか?」
「いえ、母親が受領には縁づけたくないという考えを持っておりまして…」
「どんな娘なのか会った事はあるのか?」
「いいえ、ございません」
亡き八ノ宮に縁つながる娘が他に居ると知り、秀吉は娘に興味を持つ。
「八ノ宮の縁に繋がる姫ならば、俺が世話をしたいものだな。何かの折りにやり取りをする事が有れば、俺の事を伝えてくれないか」