戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第35章 とりかえばやものがたり ― 番外編 ―<R18>
舞は自分の状態にやがて気付く。
信玄の子を妊娠したという事に。
信玄は見舞いと称して右大臣邸へしょっちゅう来ていたが、舞が会う気になれず断っていたがこの事を黙っている訳にもゆかず、乳母に家に行き、そこで信玄と会い妊娠を告げた。
「俺は嬉しいよ、これを機におんなに戻ると良い」
信玄は大層喜ぶが舞は戸惑う。
世間から『幸村中納言は、本当はおんなだった』と噂されたくない。
「俺は自分自身の始末さえつけられない。世間並みな生活を送っていないから、いつか出家しようと思っていたのに、これではそれすら出来ない」
袖を顔に押し当て舞はさめざめと泣く。
おんなに戻るという事は、今までおとことして活躍してきた全てを失う事。
並み居る大臣や自分より上の官職の人に、自分の意見を堂々と述べた事。
宴で歌を詠み帝や人々に褒められた事。
宮中の行事で華やかに装い、貴公子の花と讃えられた事。
そういった全てを記憶や生き様を全て捨てなくてはならない。
「俺はあれらを捨てなくてはならないのか…」
その様子を見て、信玄は『おんなに戻ると決めたのだな』と嬉しくなり、将来は自分の邸に妻として舞を迎え、四の君も別に世話をしようと思うのだった。
年が明け、舞はこれが最後とばかりに装い、宮中の宴なども心をこめて参加して、周囲の人たちが驚く程優れたところばかりを見せた。