第35章 とりかえばやものがたり　― 番外編 ―＜R18＞

「困るよ、こんな人目につくとこで話しをされては。本当に俺を愛してくれるなら目立つ事はしないでくれって頼んだじゃないか。俺たちは仕事上、会う機会も多いから先日のような機会は作れる可能性が有る、と伝えただろう？だからこの話しはもう止めてくれ」

と舞は咎め、そして右大臣の四の君の事も言う。

「四の君の事は知っていたよ。でも俺はこういうからだだし、四の君も運命のいたずらに翻弄されて気の毒だから、貴方が会う事があったら慰めて欲しいんだ」

信玄の宰相の中将は舞の虜になり、常に側にいるようになるが、舞はうっとうしくて仕方ない。

どうしてもおとことおんな、として会う機会があれば舞は優しく接するが、それ以外となるとあくまで一線を保ち、信玄の付け入る隙を見せなかった。

「俺より悩み深い人に会ってくれよ」

舞は四の君の事を信玄に言い、四の君も今はすっかり信玄を頼るようになっているのと舞に隠す必要も無くなった為、信玄は度々右大臣邸を訪れるようになっていた。



ある時、月の障りで舞は乳母の家に滞在している際、信玄が突然訪問してきた。

女人姿の舞はたおやかで美しく、信玄は人に自分だけのものにしたいという気持ちが沸き上がる。

しかし舞はずっとおとこ社会で生きてきた為、いきなりずっと家の中で一人のおとこを待ち続けるという生活は出来ない、と思う。

そんな中、四の君に送った文の返事が届き、それを見た信玄は寂しい言葉が綴られた四の君の文を食い入るように読み、その姿を見る舞は冷静に『信玄は四の君を心から愛している。こんな多情なおとこのおんなの一人になるのはまっぴらだ』と判断し、乳母の家から言い含めて信玄を帰し、舞自身も邸に戻った。






しばらくして舞の身に変化が起きた。

毎月あった障りがなくなってしまい、更に気分もいつもと違い、舞は不安になる。