第35章 とりかえばやものがたり　― 番外編 ―＜R18＞

やがて出産の時期が近付き、信玄の乳母のいる宇治へ舞は姿を隠した。

姿を隠した事で、右大臣の四の君の子は舞ではなく、信玄であるという噂がたち、事実とわかった事から四の君は右大臣からうとまれ、粗末な部屋へそっと移されてしまった。

そんな四の君の事を心配して、女房が密かに舞へ文を送り舞は信玄へそれを見せる。

信玄は四の君を心配し、こっそり右大臣邸へ行き、粗末な部屋に移された四の君に会う。

弱っている四の君を心配し、信玄は帰らず人に頼んでひっそり祈祷をさせたりする。

四の君を心配しながらも宇治へ戻った信玄は、数日会わなかっただけの舞がやはり愛しく思いながらも、四の君の様子を舞へ話すのだった。






一方、尚侍として東宮の許へ出仕した俺、幸村。

東宮は梨壺にいらっしゃるので、近くの宣耀殿（せんようでん）に部屋をいただき、妹のような存在の東宮とすっかり仲良くなったのは良いが、ある時東宮の柔らかな肌に今迄感じた事の無い感情を覚えてしまった。

ある夜、東宮は尚侍幸村に話す。

「尚侍、貴女が来てくれて私は本当に毎日が楽しいの。東宮なんて窮屈な立場になってしまい、毎日お勉強をしなくてはならなくてつまらない毎日だったの。でも貴女が出仕してくれて、毎日私と過ごしてお話ししてくれるから楽しいわ」

何て可愛い事を言う東宮なんだろう、幸村は東宮を抱き締めて囁く。

「宮様…貴女が私は恋しい…私は秘密を持つ者です。でも貴女を愛しいと思うのに間違いはありません…宮様、私がお嫌いですか？」

「ううん、大好き」

首を左右に振る東宮に、尚侍幸村はなお囁く。