戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第5章 花散里の巻―三成中将-<改訂>
「そうね。そうそう、三成中将様は貴女の作られたあの端午の節句の薬玉(くすだま)…
あれをご覧になって大層よく出来たお品だと、お褒めになっていらっしゃいましたよ」
「まあ、さようですか…あの光の君様に自分の作ったものをお褒めいただくなんて…
なんだか特に上手に出来たのかしらって思いますわね」
姉様を通してではあっても、どなたかから自分の作ったものをお褒めいただくなんて初めてのこと。
そんなたわいのない事なのに心がほんのり温かく感じた。
しばらくして、私が麗景殿に伺っているところに、姉様へのご機嫌伺いに三成中将様がいらした。
私は姉様とお話しをなさってお帰りになる後ろ姿に、思い切って声をお掛けした。
「あ、あの…三成…中将、さま…」
声がした方向の御簾(みす)を覗き込むように見る三成中将様。
「なんでしょう?」
穏やかな優しい声がかかる。
「あの、あの…先日は、端午の節句の薬玉をお褒めくださり…ありがとうございます…」
お礼の理由を告げると、三成中将様の紫の瞳がああ…と揺れ、以前の事を思い出されるような仕草をなさり、その場に座り直すと私に声を掛けてくださった。
「貴女があの、薬玉を作られたかたですか?」
御簾を覗き込むように問われる三成中将様は、逆光越しであっても柔らかな威厳と穏やかな雰囲気を併せ持たれる素敵な殿方と私に思わせる。