戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第31章 八ノ宮大君の巻―佐助ノ君・幸村ノ宮-<R18>
灯した火が消え、舞は言う。
「気分が悪くなりました。一休みして、また、後程に」
佐助はそれを聞いて、行動を起こす。
「そんなつれない事を言わないで欲しい。山路を深く分け入った心は苦しくてならないんだ。その心は、貴女と話す事で慰められるのに、それを見捨てて奥へ行ってしまうなんて…」
話しながら屏風に手を掛け、御簾を引き上げる。
佐助の行動に不愉快さを隠しきれず、舞は咎める。
「隔てを持たずに心ゆくまで話しをしたいのはわかりました。けれど『隔てを持たない』とはこのような事を言うのかと思うと、私には思いも寄らぬ事ですわ」
しかし舞の側へ佐助は近付き、舞へ佐助の手が伸ばされる。
そっと自分の腕の中に舞を囲った佐助は、片手で髪を撫でつつ、儚い御燈明の光に浮かぶ大君舞の美しさを目の当たりにして、小さくため息をつく。
『このような侘び住まいであれば、好き心を持ったおとこには何も障りはない。他のおとこならこのままで帰る事はしないだろう。それをしないおとこが来ないという事はあり得ない。そうなったら俺はどうなるだろう…』
腕の中で怯える舞は黙ったままで、佐助はこの後、どうしようか逡巡しながらも、決める。
『今、この先を手に入れなければ、全ては危うくなる』
佐助は舞を抱く腕にちからをこめて、優しく囁いた。
「怖がらないで欲しい。震えているけれど、これからの貴女の事は全て俺に頼って、俺に任せて欲しい。大丈夫だから。俺を信じて…舞さん」