戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第31章 八ノ宮大君の巻―佐助ノ君・幸村ノ宮-<R18>
一度言葉を切り、佐助はまた続ける。
「とりあえず俺の事は置いておくも、幸村ノ宮、つまり兵部卿の宮がこちらの姫に熱心なんだ。これは間違いない。けれど中君には良縁を望まれながら、大君は俺に心を許さない。もしや故宮が俺に頼む以前に、姫君たちには誰か心を通わせる殿方が居るのだろうか?」
弁の君は穏やかにその質問に答える。
「こちらの姫君は都の姫様がたとは違うお育ちです。違った心を持っていて当然です。でもとにかく後盾といったかたはいらっしゃらず、ですから他に心を通わせる殿方はいません。逼迫(ひっぱく)して動ける者はここを見限って去っていくような生活をしていますが、それでも大君は中君には人並みの幸せを、と望まれ、大君は中君の親代わりとなるつもりで、自分の幸せは考えていないように思います。ですから佐助様の事を厭っているのではなく、あくまで中君の幸せを望む親として生きたいようです」
佐助は驚く。
大君の望みは、中君と自分の縁。
佐助の望みは、中君と幸村、そして大君と自分。
その事を弁の君に伝え、大君と対面したいと望む。
舞は対面なぞしたくないので困る。
だが、法要の力添えをしてくれた佐助を疎略(そりゃく)にする事は出来ず対面する。
舞は心を許すつもりはなく、周囲の様子に注意をしながらゆっくりと答える。
佐助にはその様子が可愛らしく思われ、段々と落ち着きを無くしていく。
二人の隔ては、屏風と御簾のみ。
これらを押し入って思いを遂げようと思えば出来るのに、佐助は行動をおこせない。
『行動するなら今だ』そう思いながら『はしたない』と思う自分も、居る。